メニュー

男性更年期障害とテストステロン検査〜症状改善への第一歩

[2025.09.26]

男性更年期障害とは〜見過ごされがちな中年男性の悩み

「最近なんだかやる気が出ない」「疲れやすくなった」「イライラすることが増えた」。

このような症状に悩む中高年男性は少なくありません。単なる加齢や仕事のストレスと片付けられがちですが、実はこれらの症状の背景に「男性更年期障害」が潜んでいる可能性があるのです。

男性更年期障害は医学的には「LOH症候群(Late-onset Hypogonadism:加齢男性性腺機能低下症候群)」と呼ばれています。女性の更年期障害が広く知られているのに対し、男性にも同様の症状が現れることはあまり認識されていません。

女性の更年期障害は50歳前後の閉経期に女性ホルモン(エストロゲン)が急激に低下することで起こります。一方、男性の場合は男性ホルモン(テストステロン)が中年以降、加齢とともに徐々に減少することで症状が現れるのです。

テストステロンの減少速度や度合い、時期には個人差があり、40歳代から症状が現れる方もいれば、60歳代になって初めて症状を自覚する方もいます。

男性更年期障害の主な症状と健康リスク

男性更年期障害の症状は、身体的なものから精神的なものまで多岐にわたります。

主な症状として、ほてりや発汗、頭痛、めまい、耳鳴りといった身体症状に加え、不眠、無気力、イライラ、集中力低下、記憶力低下などの精神症状が挙げられます。また、性機能の低下も特徴的な症状の一つです。早朝勃起(朝勃ち)の減少や消失、勃起不全(ED)、性欲低下などが見られることがあります。

男性ホルモンの低下は単なる不調だけでなく、様々な健康リスクとも関連しています。テストステロンが減少すると、内臓脂肪の蓄積、高血圧、高脂血症、糖尿病などのいわゆる「メタボリックシンドローム」のリスクが高まります。これらは心筋梗塞や脳梗塞といった重篤な心血管疾患につながる可能性があるのです。

さらに、筋力や骨密度の低下も起こりやすくなり、骨粗鬆症やフレイル(心身の脆弱化)の原因となることもあります。これらは転倒や骨折のリスクを高め、QOL(生活の質)の低下につながります。

 

また、認知機能や記憶力の低下も見られ、認知症発症のリスク因子となる可能性も指摘されています。

男性ホルモンを正常値に保つことは、男性が健康で活力ある生活を送るために非常に重要なのです。

テストステロン検査〜男性更年期障害の診断方法

男性更年期障害の診断には、症状の評価とテストステロン値の測定が重要です。

まず、症状の評価には「AMSスコア」と呼ばれる質問票が広く用いられています。これは、身体的・精神的・性機能的な症状について17項目の質問に答え、その重症度を評価するものです。各項目は「なし」から「非常に重い」までの5段階で評価され、合計点で症状の重症度を判断します。

テストステロン値の測定は、血液検査で行われます。男性ホルモンには「総テストステロン」と「遊離テストステロン」があり、従来は遊離テストステロン値を中心に診断が行われてきました。

遊離テストステロンとは、血液中のテストステロン全体の1〜3%を占める、タンパク質と結合していない状態のテストステロンのことです。この遊離テストステロンが最も生物学的活性が高く、体内で強く働くホルモンと考えられています。

男性更年期障害の診断基準としては、遊離テストステロン値が7.5pg/ml未満の場合に「男性ホルモン低下」と診断され、7.5〜11.8pg/mlの場合は「ボーダーライン」とされます。

テストステロン値は日内変動があり、朝に最も高く、日中に低下する傾向があります。そのため、正確な診断のためには午前中(できれば午前11時まで)に採血を行うことが推奨されています。

男性更年期障害が疑われる場合は、まずは泌尿器科や内分泌内科などの専門医を受診し、適切な検査を受けることが大切です。

男性更年期障害の治療法〜テストステロン補充療法とは

男性更年期障害の治療には、生活習慣の改善から薬物療法まで、症状や重症度に応じた様々なアプローチがあります。

まず基本となるのが生活習慣の改善です。十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動、ストレス管理などが重要です。特に筋力トレーニングは男性ホルモンの分泌を促進する効果があるとされています。

症状が重く、テストステロン値が著しく低下している場合には、テストステロン補充療法が検討されます。これは、外部から男性ホルモンを補充することで症状の改善を図る治療法です。

日本で保険適用されているテストステロン補充療法としては、テストステロンエナント酸エステルの筋肉注射が一般的です。これは2〜4週間ごとに注射を行い、症状が改善するまで継続します。

テストステロン補充療法には、骨密度の増加、筋肉量の増加、体脂肪の減少、血糖コントロールの改善、抑うつ症状の改善、勃起機能の改善、健康関連QOLの向上など、様々な効果が報告されています。

ただし、すべての方に適しているわけではありません。前立腺がんや男性乳がんなどのアンドロゲン依存性悪性腫瘍がある方は禁忌とされています。また、PSA高値、うっ血性心不全、多血症、前立腺肥大症、骨転移を有する悪性腫瘍、ワルファリン内服中、睡眠時無呼吸症候群、挙児希望のある方は注意が必要です。

副作用としては、心血管系への影響、多血症、睡眠時無呼吸症候群の悪化、造精機能障害、肝機能障害、女性化乳房、皮膚障害などが報告されています。

治療を検討する際は、必ず専門医に相談し、リスクとベネフィットを十分に理解した上で判断することが重要です。

男性更年期障害の予防と対策〜日常生活での工夫

男性更年期障害の予防や症状の緩和には、日常生活での工夫が効果的です。テストステロンの低下を防ぎ、健康的な生活を送るための対策をご紹介します。

まず重要なのが、適切な運動習慣です。特に筋力トレーニングは男性ホルモンの分泌を促進する効果があります。週に3回程度、無理のない範囲で筋トレを行うことで、テストステロンの維持・増加が期待できます。また、ウォーキングなどの有酸素運動も全身の健康維持に役立ちます。

食事面では、タンパク質やビタミンD、亜鉛の摂取が重要です。これらの栄養素はテストステロンの生成に関わっています。肉、魚、卵、大豆製品などのタンパク質食品、きのこ類や魚介類のビタミンD、牡蠣や牛肉、ナッツ類に含まれる亜鉛を意識的に摂取しましょう。

十分な睡眠も欠かせません。睡眠不足はテストステロンの低下につながります。質の良い睡眠を確保するために、就寝前のスマートフォンやパソコンの使用を控え、規則正しい睡眠習慣を心がけましょう。

ストレス管理も重要です。ストレスはテストステロン低下の大敵です。趣味や運動、瞑想などでストレスを解消する時間を持ちましょう。

適正体重の維持も大切です。肥満はテストステロン値の低下と関連しています。特にBMI(体格指数)が25以上の方は、適切な食事と運動で体重管理を心がけましょう。

これらの生活習慣の改善に加え、定期的な健康診断でテストステロン値をチェックすることも予防につながります。40歳を過ぎたら、気になる症状があれば専門医に相談することをお勧めします。

まとめ〜男性更年期障害を理解し、健康的な生活を取り戻すために

男性更年期障害は、テストステロンの低下によって引き起こされる様々な心身の不調です。「なんとなく元気がない」「イライラする」といった症状が続く場合は、単なる疲れや加齢ではなく、男性更年期障害の可能性を考えてみましょう。

テストステロンは筋肉や骨の発達、性機能の維持だけでなく、気力や集中力、認知機能の維持など、男性の健康と活力を支える重要なホルモンです。その低下は、メタボリックシンドロームや心血管疾患、認知症などのリスク増加にもつながります。

男性更年期障害の診断には、AMSスコアによる症状評価とテストステロン値の測定が重要です。治療には生活習慣の改善から、症状が重い場合にはテストステロン補充療法などの医学的介入まで、症状や重症度に応じた様々なアプローチがあります。

予防や症状の緩和には、適切な運動、バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレス管理、適正体重の維持などの生活習慣の改善が効果的です。

男性更年期障害は適切な対応で症状を改善し、QOLを向上させることが可能です。気になる症状がある場合は、一人で悩まず、専門医に相談することをお勧めします。

なお、2025年9月現在、当院では遊離テストステロン測定に必要な試薬の供給不足により、男性更年期障害に関する血液検査の診断が一時的に実施できない状況となっております。同様にテストステロン注射も供給不足で実施できない状況です。再開の目処が立ち次第、改めてご案内いたしますので、ご理解とご協力をお願い申し上げます。

男性の健康と活力を維持するために、テストステロンの重要性を理解し、適切なケアを心がけましょう。

糖尿病や肥満症、甲状腺疾患、男性更年期障害などでお悩みの方は、ぜひ当院にご相談ください。専門医による適切な診断と治療をご提供いたします。いんざい糖尿病・甲状腺クリニックでは、患者様一人ひとりに合わせたオーダーメイドの治療を心がけております。

【著者情報】

院長 髙橋 紘(たかはし ひろし)

いんざい糖尿病・甲状腺クリニック 院長。
日出学園小学校、攻玉社高等学校を経て、埼玉医科大学医学部医学科を卒業。東京慈恵会医科大学大学院医学系研究科を修了し、医学博士を取得。

2010年より東京慈恵会医科大学附属病院にて初期研修を開始し、その後、糖尿病・代謝・内分泌内科を専門に臨床・教育・研究に従事。富士市立中央病院や東京慈恵会医科大学附属第三病院での勤務を経て、2023年からは同附属病院糖尿病・代謝・内分泌内科にて外来医長を務める。2024年6月、千葉県印西市に「いんざい糖尿病・甲状腺クリニック」を開院。

また、東京慈恵会慈恵看護専門学校や日本看護協会看護研修学校で非常勤講師として教育にも携わる。

資格・所属学会

医学博士

日本内科学会 総合内科専門医

日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医

日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医・指導医

日本肥満学会 肥満症専門医

難病指定医

小児慢性特定疾患指定医

 

 

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME