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糖尿病の初期症状8つ|見逃しやすいサインと早期発見のポイント

[2025.10.20]

糖尿病は初期段階では自覚症状が乏しいため、「サイレントキラー」とも呼ばれています。気づかないうちに進行し、合併症を引き起こすリスクがあるため、早期発見が非常に重要です。私は糖尿病専門医として、多くの患者さんが「もっと早く気づいていれば」と後悔される姿を見てきました。

糖尿病の初期症状は日常的な不調と見分けがつきにくく、「単なる疲れ」や「年齢のせい」と思い込んでしまうことが少なくありません。しかし、いくつかの特徴的なサインを知っておくことで、早期発見・早期治療につなげることができます。

この記事では、糖尿病の初期段階で現れやすい8つの症状と、見逃さないためのポイントについて解説します。ご自身やご家族の健康を守るための参考にしていただければ幸いです。

糖尿病とは?基本的なメカニズムを理解する

糖尿病は血液中のブドウ糖(血糖)が慢性的に高い状態が続く病気です。通常、私たちが食事をすると血糖値が上昇しますが、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンの働きによって、糖分が細胞に取り込まれ、血糖値は正常範囲に戻ります。

糖尿病では、このインスリンの分泌量が不足したり、インスリンの働きが悪くなったりすることで、血糖値が高い状態が続いてしまいます。その結果、全身の血管や神経にダメージを与え、さまざまな合併症を引き起こす可能性があるのです。

糖尿病は大きく分けて以下の種類があります:

  • 1型糖尿病:主に自己免疫疾患により、インスリンを作る膵臓のβ細胞が破壊されることで発症します。若年者に多く見られます。
  • 2型糖尿病:インスリンの分泌低下やインスリン抵抗性(効きにくさ)が原因で発症します。生活習慣や遺伝的要因が関与し、成人に多く見られます。
  • 妊娠糖尿病:妊娠中にホルモンバランスの変化などにより血糖値が上昇する状態です。

日本における糖尿病患者数は増加傾向にあり、特に2型糖尿病は生活習慣病としての側面が強いため、早期発見と適切な生活習慣の改善が重要です。

糖尿病の初期症状8つ

糖尿病の初期段階では、以下のような症状が現れることがあります。ただし、これらの症状は他の病気でも見られることがあるため、複数の症状が持続する場合は医療機関での検査をお勧めします。

1. 喉の渇きと多飲

血糖値が高くなると、腎臓は余分な糖分を尿として排出しようとします。この際、糖分と一緒に大量の水分も失われるため、脱水状態になり強い喉の渇きを感じるようになります。

「いくら水を飲んでも喉が渇く」「夜中に喉が渇いて目が覚める」といった症状が続く場合は注意が必要です。1日に2リットル以上の水分を摂取しているにもかかわらず喉の渇きが続く場合は、糖尿病を疑う重要なサインかもしれません。

2. 頻尿と多尿

高血糖状態では、腎臓が余分な糖を排出するために尿量が増加します。そのため、トイレに行く回数が明らかに増えたり、夜間に何度もトイレで目が覚めたりします。

特に夜間頻尿(夜間に2回以上トイレに行く状態)が続く場合は、糖尿病の可能性を考慮する必要があります。映画を最後まで見られないほど頻繁にトイレに行きたくなったり、長時間の会議や移動が不安になるほど尿意を感じるようになったりした場合は、医師に相談しましょう。

3. 疲労感と倦怠感

糖尿病では、細胞にブドウ糖が取り込まれにくくなるため、エネルギー不足の状態になります。そのため、十分な睡眠をとっても疲れが取れない、日常的な活動でも異常に疲れるといった症状が現れることがあります。

「朝起きた時点ですでに疲れている」「階段を上るのが以前より辛い」「仕事や家事への集中力が続かない」といった状況が続く場合は、糖尿病の初期症状かもしれません。

4. 原因不明の体重減少

インスリンの作用が不十分になると、体内でブドウ糖をエネルギーとして利用できなくなります。そのため、体は脂肪や筋肉を分解してエネルギー源とするようになり、食欲が増しているにもかかわらず体重が減少することがあります。

「食事量は変わらないのに、1ヶ月で2-3kg体重が減った」といった変化が見られた場合は、糖尿病を疑うべきサインの一つです。特に意図的なダイエットをしていないのに体重が減少する場合は注意が必要です。

5. 皮膚の異常

高血糖状態が続くと、皮膚の乾燥やかゆみが生じることがあります。また、傷の治りが遅くなったり、小さな傷が感染しやすくなったりすることもあります。

「ちょっとした擦り傷がなかなか治らない」「皮膚のかゆみが続く」「同じ場所に繰り返し皮膚感染症ができる」といった症状が見られる場合は、血糖値のチェックを検討してみてください。

見逃しやすい糖尿病の初期サイン

上記の主要な症状に加えて、以下のような見逃しやすい初期サインもあります。これらは一般的に「年齢のせい」や「ストレス」と片付けられがちですが、糖尿病の初期症状である可能性もあります。

6. 視力の変化

血糖値の変動により、目のレンズが一時的に膨張・収縮することで、視界がぼやけたり、かすんだりすることがあります。「新聞の文字が読みにくくなった」「夜間の運転が不安になった」といった視力の変化を感じる場合は、糖尿病の可能性も考慮すべきです。

特に、急に視力が変化した場合や、メガネやコンタクトレンズの度数が合わなくなった場合は、眼科と同時に内科も受診することをお勧めします。

7. 手足のしびれやピリピリ感

高血糖が長期間続くことで神経が障害される「糖尿病性神経障害」の初期症状として、手足のしびれやピリピリ感が現れることがあります。特に夜間に症状が強くなることが特徴です。

「靴下を履いているような感覚がある」「手足の指先がピリピリする」といった症状が続く場合は、糖尿病の可能性を考慮して医師に相談しましょう。

8. 感染症にかかりやすくなる

糖尿病では免疫機能が低下するため、感染症にかかりやすくなります。特に、尿路感染症、歯周病、皮膚感染症などが繰り返し発生する場合は注意が必要です。

「歯磨きをしても歯茎の腫れが引かない」「膀胱炎を繰り返す」「水虫が治りにくい」といった症状が続く場合は、糖尿病の可能性も考慮して検査を受けることをお勧めします。

これらの症状は単独では見過ごされやすいですが、複数の症状が同時に現れる場合は、糖尿病を疑う重要なサインとなります。

糖尿病の早期発見が重要な理由

糖尿病は早期に発見し、適切な治療を開始することで、合併症のリスクを大幅に減らすことができます。以下に、早期発見・早期治療の重要性について説明します。

合併症予防の観点から

糖尿病が進行すると、以下のような深刻な合併症を引き起こす可能性があります:

  • 糖尿病網膜症:失明の主要な原因となります
  • 糖尿病性腎症:腎不全を引き起こし、透析が必要になることがあります
  • 糖尿病性神経障害:手足のしびれや痛み、最悪の場合は足の切断につながることもあります
  • 大血管障害:心筋梗塞や脳卒中などの重大な疾患のリスクが高まります

これらの合併症は、いったん発症すると完全に元に戻すことが難しいケースが多いです。しかし、早期に糖尿病を発見し、適切な血糖コントロールを行うことで、合併症の発症や進行を遅らせることができます。

生活の質の維持

糖尿病の合併症は、日常生活の質を著しく低下させる可能性があります。視力低下や腎機能障害、神経障害による痛みなどは、仕事や趣味、家族との時間など、生活のあらゆる面に影響を及ぼします。

早期発見・早期治療によって適切な血糖コントロールを行うことで、これらの合併症のリスクを減らし、長期的に良好な生活の質を維持することができます。

経済的負担の軽減

糖尿病の合併症治療には、高額な医療費がかかることがあります。特に、透析治療は身体的負担だけでなく、経済的にも大きな負担となります。

早期発見・早期治療によって合併症を予防することは、将来的な医療費の削減にもつながります。健康診断や定期的な検査は短期的には費用がかかりますが、長期的には大きな医療費の節約になる可能性があります。

糖尿病の早期発見のためのポイント

糖尿病の早期発見には、以下のポイントが重要です。

定期的な健康診断の受診

年に1回は健康診断を受け、血糖値や HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー:過去1〜2ヶ月の平均血糖値を反映する指標)をチェックすることが大切です。特に、40歳以上の方や糖尿病の家族歴がある方は、定期的な検査が重要です。

健康診断で「血糖値が高め」と指摘されたら、軽視せずに医療機関を受診しましょう。「境界型」と言われる予備群の段階から適切な対応をすることで、糖尿病への進行を防ぐことができます。

リスク要因の認識

以下のような要因がある場合は、糖尿病のリスクが高まります:

  • 家族に糖尿病患者がいる(特に親や兄弟姉妹)
  • 肥満(特に内臓脂肪型肥満)
  • 運動不足
  • 高血圧や脂質異常症がある
  • 過去に妊娠糖尿病の経験がある
  • ストレスが多い生活を送っている

これらの要因が複数当てはまる場合は、症状がなくても定期的に検査を受けることをお勧めします。

症状の変化に敏感になる

前述した8つの初期症状に注意し、複数の症状が同時に現れる場合や、症状が持続する場合は、医療機関を受診しましょう。特に、「喉の渇き」「頻尿」「疲労感」の3つの症状が同時に現れる場合は、糖尿病の可能性が高いと考えられます。

「なんとなく調子が悪い」という感覚も大切なサインです。体調の変化を軽視せず、必要に応じて医療機関に相談することが早期発見につながります。

糖尿病と診断されたら

糖尿病と診断された場合でも、適切な治療と生活習慣の改善によって、健康的な生活を送ることは十分に可能です。

専門医による適切な治療

糖尿病と診断されたら、糖尿病専門医による適切な治療を受けることが重要です。糖尿病の種類や進行度、全身状態に応じた最適な治療計画が立てられます。

治療には、食事療法、運動療法、薬物療法などがありますが、これらを組み合わせた「オーダーメイド治療」が効果的です。一人ひとりの生活スタイルや好みに合わせた治療計画を立てることで、長期的に継続できる治療が可能になります。

生活習慣の改善

特に2型糖尿病では、生活習慣の改善が治療の基本となります。バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレス管理などが重要です。

これらの生活習慣の改善は、薬物療法と併用することで、より効果的な血糖コントロールにつながります。また、生活習慣の改善は糖尿病だけでなく、他の生活習慣病の予防にも効果があります。

定期的な検査と合併症の早期発見

糖尿病と診断された後も、定期的な検査を受け、合併症の早期発見・早期治療に努めることが重要です。特に、眼科検査、腎機能検査、神経機能検査などは定期的に受けるべきです。

合併症は早期に発見すれば、進行を遅らせたり、症状を軽減したりすることが可能です。定期的な検査を怠らず、医師の指示に従って適切な管理を行いましょう。

まとめ

糖尿病は初期段階では自覚症状が乏しいため、気づかないうちに進行してしまうことがあります。しかし、「喉の渇き」「頻尿」「疲労感」「原因不明の体重減少」「皮膚の異常」「視力の変化」「手足のしびれ」「感染症にかかりやすい」といった初期症状を知っておくことで、早期発見につながる可能性が高まります。

糖尿病の早期発見・早期治療は、合併症の予防や生活の質の維持、経済的負担の軽減につながります。定期的な健康診断の受診、リスク要因の認識、症状の変化に敏感になることが、早期発見のポイントです。

糖尿病と診断された場合でも、専門医による適切な治療と生活習慣の改善によって、健康的な生活を送ることは十分に可能です。「100人100通り」のオーダーメイド治療を受けることで、長期的に継続できる治療が可能になります。

糖尿病に関する正しい知識を持ち、早期発見・早期治療に努めることで、糖尿病と上手に付き合っていきましょう。

当院では、糖尿病専門医による最適な治療計画の立案、最新の治療法の提供、チーム医療によるトータルサポートを行っています。糖尿病の症状でお悩みの方、糖尿病の予防に関心のある方は、お気軽にいんざい糖尿病・甲状腺クリニックにご相談ください。

【著者情報】

院長 髙橋 紘(たかはし ひろ)

いんざい糖尿病・甲状腺クリニック 院長。
日出学園小学校、攻玉社高等学校を経て、埼玉医科大学医学部医学科を卒業。東京慈恵会医科大学大学院医学系研究科を修了し、医学博士を取得。

2010年より東京慈恵会医科大学附属病院にて初期研修を開始し、その後、糖尿病・代謝・内分泌内科を専門に臨床・教育・研究に従事。富士市立中央病院や東京慈恵会医科大学附属第三病院での勤務を経て、2023年からは同附属病院糖尿病・代謝・内分泌内科にて外来医長を務める。2024年6月、千葉県印西市に「いんざい糖尿病・甲状腺クリニック」を開院。

また、東京慈恵会慈恵看護専門学校や日本看護協会看護研修学校で非常勤講師として教育にも携わる。

資格・所属学会

医学博士

日本内科学会 総合内科専門医

日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医

日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医・指導医

日本肥満学会 肥満症専門医

難病指定医

小児慢性特定疾患指定医

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